2013.06.30 アチャ研・養鶏の「糞詰り」課題~発酵堆肥によるソリューション
養鶏の糞詰り課題 ・・・発酵堆肥によるソリューション
採卵目的にわとり飼育、すなわち養鶏を営むと糞がでます。この鶏糞
がなにかと厄介なんです。鶏糞といえば、春・秋に有機農家は積極的
につかう肥料のひとつ。窒素(尿素)、リン、カリウム、マグネシウム
と効かせたい成分をたっぷり含んだ天然由来肥料です。
それのなにが厄介なのか….。
まず畜産でつきものの 家畜糞は、
「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」
で適正な管理が義務付けられています。一般に、熱乾燥させるか、発酵
させて堆肥化させるべきなのですがこの処理には相当の時間がかかり、
持ち出せるようになるまでに、日々量が増えてゆくことになるわけです。
今回、神奈川県の養鶏農家「コトブキ園」さんと、僕らアチャ研講師で
お馴染みの齋藤さんが剪定枝チップと鶏糞を混和して発酵させる仕組みに
チャレンジされています。その仕組みを学びに現場へ向かいました。
コトブキ園が飼育するにわとりは四万羽。家畜排泄物管理法の基準
通りに堆肥場を設けておられます。
ケージから排泄された鶏糞はベルトコンベアーでこの堆肥場へ搬送され
積上げられます。ここをロータリーで攪拌、空気を入れることで微生物
による一次発酵が始まります。好気性の細菌(緑膿菌等)により、尿酸が
大量の酸素を使って、尿素、そして二酸化炭素とアンモニアに分解され
ます。この時発生する高熱により、病原となる菌も殺菌します。
この一次発酵が進むところに、細かく粉砕した剪定枝チップを彼らは
投入しています。山間部管理が多いエリアで発生する産廃、剪定枝クズ
は木質(リグニン)を多く含むため、生分解しにくく、焼却処分に相当の
費用がかかるもの。
これを鶏糞と一緒に攪拌することで、剪定枝の構造の熱変性させます。
ここで溶脱する細胞内液が鶏糞にしみこみ、硝石が生成されるとの仮説。
この生成されているであろう硝石は酸化剤として鶏糞の発酵を安定化、
熟成を促進させると考えられています。
生成された鶏糞堆肥は、分析の結果、天然由来の肥料としてとても望ましい
結果をだしています。
一番心配される炭素率(C/N比)は11.5と、そのまま圃場に投入しても
窒素飢餓の心配が無いレベル。
pH:9.1
ec:6.16 mS/cm
窒素全量:2.2 wt%
リン酸全量:5.3 wt%
カリ全量:1.3 wt%
石灰全量:18 wt%
苦土全量:1.7 wt%
C/N比: 11.5
このコトブキ園では、発酵が進み、悪臭もしない良い堆肥が作られています。
●養鶏糞詰まり解決方針
出来てきたこの堆肥、積極的に活用するために農地で実証しようとした
ところ、畑を借りる「農地法3条許可」が問題になってきました。
知らなかったのですが、養鶏農家と呼ばれながら、畜産業である彼らは
耕種農家ではないので、「畑」を購入したり、借りて営農することが認め
られていません。
そこで耕種農家を法人で雇用、プロジェクトに参加してもらい、営農計
画をたてて、農地法3条許可を得た実践耕作地を獲得されています。
養鶏農家が安定した発酵堆肥製造プロセスを手に入れて、自らの耕作地
を持ち、それらを投肥、栽培する流れをもてれば、10万羽程度までの小規
模養鶏でも自社の卵に”循環型”といった付加価値を与えながら畜肥管理問
題を解決する方法なのではと、彼らの取組は評価できます。
●発電への展開
昨今の発電システム市場拡がりから、小型バイナリー発電プラントが各
社から発表されています。畜肥型バイオマスを使ったシステムはイタリア
から一社、100事例を超える導入実績持つメーカーもあります。
売電によるシステムの償却と併せれば、小規模養鶏農家にとってより高い
収益性を伴う環境保全型の養畜事業を進めてゆける。
彼らの取組から、そんな手触りを感じました。
データ提供:齋藤 毅(株式会社日本情報化農業研究所)、コトブキ園